ブログ「川辺にて思う」

おとぎ話/ニューズレターから加筆して

3ヶ月ぶりのブログです。

何度か書けそうな気配がこの3ヶ月間にあったのですが、
実際に着手するには時間が足りず、
なかなか残念な状態にありました。

数日前に大阪での本年最後のトレーニングを終えて、
今は燃え尽きているところです。
ちょっと長文を書くにはエネルギー不足と言えます。

そのこともあるのですが、
春にニューズレターに掲載した文章について、
最近あらためて考える機会があり、ちょっと色々思いめぐらしていました。
そこで、その文章に加筆して、
ブログでも紹介することにしました。
ニューズレターを読んでくださっている方には、
同じ文章を載せるということで、
きっとつまらないと思いますが何卒ご了承ください。

これは劣等感のために、
与え受け取る関係が何なのか、
よくわからない人に贈る物語です。
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『犬と男と木のお話』

 

昔々あるところに、一匹の仔犬が捨てられていました。

 

丸々と太った柴犬の子っぽい姿です。雑種かも知れません。

ようやく乳離れしたくらいの大きさです。

鼻の周りは黒っぽく、体の色は灰色がかった薄茶色。

背中には、何か布でくるまれた包みを背負っています。

 

日が暮れ始め、寒くなっても、

心細そうにその仔犬はさまよっていました。

枯れ葉がカサコソと風に舞い、寒さは刺さるようです。

 

仔犬は一人のやせ細ったホームレスの男を見つけ、

近づいて行きました。

何か食べ物をくれるだろうか。

優しく撫でてくれるだろうか。

無邪気に足元にまとわりついて、

まっすぐな、少し困った目で男を見上げました。

 

男自身も今夜寝るところもない、

食べるものもない、

持ち金はわずかな小銭のみで、

惨めで情けない気持ちでいたところでした。

 

そんな自分にまとわりついてくる、

ふくふくと太った温かな小さな生き物に、

思わず彼も手を伸ばして触ってみたくなりました。

 

撫でてみると、指先を伝わって、

温もりが自分の体に流れ込んでくるようです。

仔犬は嬉しそうに男の手にじゃれつきます。

男はだんだん楽しくなってきました。

男はなけなしの金で買ったパンをちぎって、仔犬に分けてやりました。

 

一人と一匹で一緒にパンを食べながら、

男はふと、仔犬の背にくくりつけられている小さな包みに気がつきました。

開けてみると、

驚いたことにそれは札束でした。

最初びっくりして、ポカーンとして、

それからじわじわと笑いがこみ上げてきて、

しまいには浮かれて仔犬を抱き上げ踊り出しました。

 

男はその夜、仔犬と一緒に温かい食べ物を取り、

暖かい寝床を得て、

神様に感謝して、仔犬を懐に抱いて、

安心して眠りにつきました。

 

男は自分の元に札束を背負って現れた仔犬を、

自分への贈り物だと思い、

仔犬と一緒に暮らすようになりました。

 

その札束から1枚、また1枚と抜き取っては、

その日の糧に変え、寝る場所を得るために、

男は使っていきました。

 

一夜限りの場所を転々とするのをやめようと、

男は村はずれにわずかばかりの土地を得て、

自分で小屋を建てました。

そこでは雨露をしのぐことができ、

粗末なかまどで暖かいスープを作ることができました。

 

そうやって、札束はだんだん薄くなっていったのです。

けれど、そのうち男は仔犬が不思議な犬だということに気がつきます。

 

もうそろそろお金もつきてしまうと思い始めた頃、

仔犬がどこかに消えてしまいます。

そして、帰ってくるとまた背中に札束を背負っているのです。

 

ただ、最初の包みと比べると、

札束の厚みはわずかに減っていました。


そんなことが何度か続くと、

男は金を使っても、使っても、

犬が何度でも札束を背負って戻って来ると安心するようになりました。

いつしか、それは当たり前のようになっていったのです。

仔犬は相変わらず無邪気で、

自分を可愛がってくれる男が大好きで、

男が寝るときにはその足元にくっついて、

丸くなって寝るのが大好きです。

 

男は金が無くならないことを当然として、

その日の糧と寝床以外に、

若かった頃に追いかけた夢を取り戻そうと、

かつて諦めた楽器を買い、

見栄えのする服を買い、

酒を飲むようになりました。

 

そうして、犬と暮らしていた小さな家に、

男自身が帰ってくる日がだんだん減っていきました。

 

仔犬は少しずつ大きくなり、

時折いなくなっては、

また前よりは少し薄くなった札束を背にくくりつけて帰ってきます。

けれどそのたびに足取りは少しずつ重くなり、

疲れた様子で帰ってくることが多くなってきました。

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それでも男の顔を見つけると、

犬はクルクルと回って、

飛び跳ねて全身で嬉しさを表しました。

その姿を見ると、

男も満足げで、

よしよしと背中を撫でてやりました。

 

ある日、犬の歯が抜けました。

乳歯が抜けて、犬も成犬の歯に生え変わるのです。

 

仔犬の不思議な力は、

その幼さに与えられていたものでした。

 

体も大きくなり、

仔犬だったその子はもう仔犬ではなくなりました。

そして、札束がもうあと数枚に減ってしまっても、

いなくなることもなく、

札束を背中にくくりつけて帰ってくることもなくなりました。

 

なかなか帰ってこなくなった大好きな男を待ちわびて、

戸口に座り込んで待つ日が増えました。

犬はだんだん痩せていき、元気がなくなっていきました。

 

2週間近く過ぎた頃、

通りのはるか向こうに犬は懐かしい男の匂いを嗅ぎ分けます。

 

そして、その匂いに向かって、

やせ細った足でよたよたと近づいていくと、

犬にはよくわからない光景が待っていました。

 

綺麗に着飾った男が、

年配の女の人と一緒に、

美しく手入れされた大型犬の散歩をしているのです。

 

痩せて、みすぼらしくなった犬には気がつきもしないで。

 

犬は追いかけて行って、

以前のように男にじゃれついて、

足元でクルクル回ってはしゃごうとしたら、

大型犬が立ちはだかり、

唸られ、脅かされて追い返されてしまいました。

 

男はまるで犬の事を忘れてしまったかのように、

気にもかけない様子で、

傍らの女の人と談笑しながら歩き去っていきました。

 

男に近づく事さえできず、

悲しくて、悲しくて、悲しくて、

犬はうなだれ、立ち尽くし、

その場所で動けなくなってしまいました。

体はだんだんと凍え、固まっていきます。

 

それでもこう思っていたのです。

「あのヒトさんはワタシの事は好きだけど、

もう仔犬じゃなくなって、

あのヒトさんに役立つ紙の束を持って来れなくなったから、

これは仕方ないんだ。

ワタシのあのヒトさんは生きていくために、

ああするしかないんだ」

 

そんな風に犬は思い、

歯を食いしばって耐え、

大好きなあの人間にもう会えないのだと、

必死で諦めようとしました。

 

どんなにそう自分に言い聞かせても、

犬はやっぱり、

悲しくて、悲しくて、悲しくて、

その動けなくなった場所で、

犬の体は強張り、四本の足は地面に触れているところから、

徐々に石になっていき、

心はちぎれて血を流し出しました。

そしてとうとうその場所で、犬の体はすべて石になってしまったのです。

それもわずかの内にボロボロと崩れ落ち始め、

犬の姿だったことも、そのうちわからなくなっていきました。

 

その年もまた、いつものように冬が来て、

雪が降り、辺りを真っ白に覆いました。

 

 

それから35年の月日が流れました。

犬が死んだその場所に、

今では木が立っています。

 

日差しの強い日には、

その木の下に座って休むと、

木漏れ日と風の流れを楽しむことができます。

とても大きな木です。

 

木は聞いていました。

人がその下で休んだ時のおしゃべりを。

 

木は読んでいました。

誰かが木の下で本を読んでいたら、

その木も本を見下ろして、

その本を読む人の心を読んでいました。

 

夕立で雨宿りした子供たちの、

クスクス笑いは木を嬉しくさせました。

 

たまに犬が立ち寄っておしっこをかけて行った時には、

昔々、自分もやったなあと懐かしく、

寛容な気持ちになりました。

 

ある日の午後、

質素な黒い服を着た男が二人、

その木の下に腰を下ろして喋り始めました。

 

その男たちは語っていました。

あのホームレスだった男のことを。

 

木の葉は全部、瞬時に下を向いて聞き耳を立てました。

 

「いい奴だったけどな」。

「うん」。

「結局、一人っきりで死んじまったな」。

「そうだな」。

「病気、長かったな」。

「誰にも看取られずにな」。

「無一文でな」。

「死んでからだいぶ経って見つかったんだな」。

「可哀想にな」。

「働かない奴だったな」。

「いつも女に養ってもらってたな」。

「俺、病気の見舞いに行ったんだ。

その時に、昔、仔犬を飼っていたよな?って聞いたんだ。

俺、犬好きだから」。

 

風もないのに、

木の葉がざわめきました。

奥の方に眠っていた何かが、その瞬間、動揺していました。

 

「そしたら、奴はこう答えたんだよ。

あっけらかんとした口ぶりでさ。

『犬を飼ったことはないなあ』」。

 

「ちょっと言ってる意味がよくわかんなかった。

俺は、犬は家族だと思うから、忘れるってのがよくわからん」。

 

そこまでしゃべってから、

しばし、二人は沈黙し、

それから立ち上がってそれぞれの道に去って行きました。

 

木は静かに葉っぱを太陽の方に向け、

大きく伸びをして思いました。

ああ、これでようやく眠りから覚めることができる、と。

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<おしまい>

 

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お 知 ら せ

2019年2月に東京で、3月に大阪でワークショップを開催します。

☆ 問題についての働きかけをご希望の方は早めにお申し込みください。

 

☆ 4月からは、システミック・コンステレーション・トレーニング第13期基礎コースが開講します。ご希望の方には募集要項をお送りしますので、コンステレーションズ・ジャパンまでお問い合わせください。

☆ 個人セッションは2019年春まで休止中です。


 

システミック・コンステレーション・ワークショップ/2月 東京

ファシリテーター:小林
真美(チェトナ 小林)

日時: 2019
2

23

(
)24
(
)
10:00
18:00

場所: 東京都、江東区

参加費:一般:48,600/2日間(45,000円+消費


 

システミック・コンステレーション・ワークショップ/3月 大阪

ファシリテーター:小林
真美(チェトナ 小林)

日時: 2019
3

16

(
)17
(
)
10:00
18:00

場所: 大阪府、池田市

参加費:一般:48,600/2日間(45,000円+消費



ワークショップの両方とも
トレーニング生は参加費が異なるためお問い合わせください。
主催:コンステレーションズジャパン
お問い合わせお申し込み:コンステレーションズジャパンまで
トレーニング生は参加費が異なるためお問い合わせください。
主催:コンステレーションズジャパン
お問い合わせお申し込み:https://constellations-japan.com

 



 

13期トレーニング 基礎コース 1回目

日時:2019
4
27
(
),
10:00

2019

4

29

(
),
18:00

場所:東京都、江東区

初回内容: 基礎コースなワークとエクササイズを通して基本を身につける講師:小林真美(チェトナ小林)
お申し込みは集要項とプログラムをご覧ください。

 

 

 

 

※ コンステレーションズ・ジャパン®の名称は商標登録済みです。

 

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